空き家問題は、所有者の資産を食いつぶすだけでなく、放置すれば近隣トラブルや行政処分の対象にもなる深刻な問題です。しかし、視点を少し変えるだけで、その空き家が「毎月家賃を生み出す金の卵」に変わる可能性があります。

今回は、東京23区にお住まいの会社員S様（40代）が、片道1時間半かかる郊外の実家を「戸建て賃貸」として再生し、見事に収益化に成功した実例をご紹介します。

売却でも解体でもない、第三の選択肢。「空き家活用」のヒントがここにあります。

「負動産」からの脱却。S様が空き家活用を決断した理由

S様が相続したのは、千葉県のベッドタウンにある築45年の木造2階建て住宅です。 最寄り駅からはバス便で、建物もかなり老朽化していました。S様は当初、売却を検討しましたが、査定額は二束三文。「解体費用を引いたら手元にほとんど残らない」という厳しい現実を突きつけられました。

「売るに売れないが、持っているだけで年間10万円以上の固定資産税がかかる。さらに夏場は雑草の苦情対応で休日が潰れる…」

まさに典型的な「負動産」状態でした。しかし、転機となったのは、解決不動産が行う空き家活用セミナーでのアドバイスでした。 「駅遠の古い家でも、ターゲットを絞れば必ず需要はある」 この言葉に背中を押され、S様は安易な売却を諦め、賃貸物件としての再生プロジェクトをスタートさせたのです。

リフォーム費用を抑える工夫と「ターゲット設定」の妙

賃貸に出すとなると、数百万円のリフォーム費用がかかるイメージがあります。しかし、S様がかけた費用は総額で約80万円。驚くべき低コストです。

その秘訣は、「ターゲットの明確化」と「一点豪華主義」にありました。

S様が狙ったターゲットは、「ペット（大型犬）を飼っているファミリー層」です。 一般的な賃貸アパートでは、大型犬の飼育は敬遠されがちです。そこでS様は、「ペット共生」をコンセプトに設定。

あえて古いまま残す： 傷がつくことを前提に、フローリングの張り替えはせず、既存の床を補修＆ワックスがけのみで対応。

DIY可能物件にする： 壁紙の汚れなどは「入居者が好きに張り替えてOK」という条件にし、オーナー側の修繕費をカット。

水回りだけは新品に： 唯一、生活の質に直結する「トイレ」と「洗面台」だけは最新のものに入れ替え、清潔感をアピール。

「全てを綺麗にする必要はない」と割り切ったことで、劇的なコストダウンに成功しました。

客付けに成功！入居者が決まった意外な「決め手」とは

リフォーム完了後、S様は「ペット可・DIY可・駐車場2台付き」という条件で入居者を募集しました。家賃設定は相場より少し強気の8万円。

「本当に決まるだろうか…」というS様の不安をよそに、募集開始からわずか2週間で申し込みが入りました。 入居を決めたのは、やはり大型犬2匹と暮らす30代のご夫婦でした。

彼らが契約を決めた最大の理由は、S様にとっては悩みの種だった**「広すぎる庭」**でした。 「この広さならドッグランが作れる！アパートでは絶対に無理な環境です！」と大喜び。所有者にとっては「草むしりが大変な場所」が、入居者にとっては「かけがえのない価値」に変わった瞬間でした。

収益だけじゃない。空き家活用がもたらした3つのメリット

現在、S様は毎月8万円の家賃収入を得ています。ローンのない相続物件だったため、経費を引いても年間約80万円のキャッシュフローが手元に残ります。

しかし、S様は「お金以外のメリットも大きかった」と語ります。

建物の寿命が延びた： 人が住んで換気や通水が行われることで、建物の老朽化スピードが劇的に遅くなった。

ご近所トラブルの解消： 入居者が庭の手入れをしてくれるため、近隣からの苦情がなくなり、地域コミュニティも活性化した。

将来の選択肢が増えた： 収益物件としての実績（レントロール）ができたことで、将来的に「オーナーチェンジ物件」として高く売却する道も拓けた。

まとめ

S様の成功事例から学ぶべきポイントは以下の3点です。

立地が悪くても諦めない： 「ペット可」「DIY可」など、アパートにはない付加価値をつけることで需要は作れる。

完璧を目指さない： ターゲットに合わせてリフォーム箇所を絞り、初期投資を抑えることが収益化の鍵。

「短所」を「長所」に変える： 広い庭や古い内装も、見せ方次第で強力な武器になる。

「空き家」は放置すればリスクですが、知恵を使えば立派な「資産」になります。 もし、使い道のない実家を持て余しているなら、一度「賃貸活用」のシミュレーションをしてみてはいかがでしょうか。S様のように、あなたの空き家を「探している人」が必ずどこかにいます。